私がアロマセラピーに出逢い、アロマセラピーを初めて学んだのは1998年。
当時の日本では、まだ多くなかったアロマセラピースクールでした。本場イギリスで学んだ講師によるアロマセラピー、リフレクソロジー、アロマセラピーマッサージが私にはとても合っていました。
プロとして人に触れたのは、アロマセラピースクール卒業後と同時に入社した、大手リラクゼーションサロンでした。無心でお客様にトリートメントをしていると自分が心底リラックスし、言葉では表現出来ない幸福感が溢れました。日本のある実験で、施術を受ける側より、施術者のオキシトシンの上昇が多い結果が出ています。
”マッサージを施術するのは疲れませんか?とよく聞かれるのですが、施術中は、自分が施術をしているという意識がなくなり、手や体が自然に動き、実はとても気持ち良い状態になっています。
入社時当初は、少しここで経験を積んでから、自分でサロンをオープンする予定でした。サロンのお仕事は、スクールで生徒同士で施術を行なっていた時とは全てが違いました。現場ではスクールでは学べないことばかり。クライアント一人一人が違うように、悩みも一人一人違います。毎日が新しい発見、学びの連続でした。色々な自然療法にも出逢い、興味が湧き、日々勉強が始まりました。
英国IFPA(国際プロフェショナル・アロマセラピスト連盟)資格を取得することになったのは、私がこの世界に入るきっかけとなった1冊の本『アロマセラピーマッサージブック』の著者、イギリスアロマセラピーの第一人者であるクレア・マクスエル・ハドソンのロンドンスクールのクリニカルアロマセラピーを学べる機会が訪れたのでした。経験豊かなメディカルアロマセラピストとして本場英国の現場で活躍している講師達から、イギリスでのホスピス、総合病院、癌患者のための訪問アロマケアが実施され、アロマセラピストが普段のサロンワークと並行して活動していることを学びました。今まで学んできたアロマセラピー とメディカルアロマセラピーの大きな違い。精油が持つ薬理効果を、皮膚疾患、伝染症疾患、神経性疾患の治療に、自然治癒力を高め心身を健全な状態へと導く目的として専門知識を学びました。IFPA資格取得を目指し250時間以上のカリキュラム、全身のトリートメント、アロマテラピー理論、解剖生理学などを学びました。実技試験、筆記試験、論文、ケーススタディ60件。当時、仕事と両立でよく終えれたと今でも思います。それほど夢中でした。これが私のアロマセラピーの軸となっています。
多くの自然療法をスクールなどでも学びながら、大手リラクゼーションサロン、BODY SHOPリフレクソロジーサロン、メディカル・クリニックでなどでの経験を積んでいきました。
リッツ・カールトン、スイスホテルのスパでの研修を得て、インターナショナルホテルのスパセラピストとなりました。スイスホテルのスパアムリタではマネージャー兼ホットストーンのインストラクターとして、とても貴重な経験をさせて頂きました。
日本からアメリカへ来るきっかけは、海外で、今までの自分の経験を試してみたいと思っていました。サンフラシスコでその機会に恵まれ、アメリカでサロン、スパでのセラピストのお仕事と、アメリカ生活が始まりました。
日本とは違い、アメリカではマッサージ、エステシャンのお仕事をするには、州のライセンスが必要です。
マッサージ、エステティシャンのライセンス取得のため、一からこちらのスクールに通い学びました。英語での実技試験、筆記試験に合格したことは本当に嬉かったものです。
言語、カルチャーの違いに戸惑いながらも、日本とアメリカの良いと思うものを自分なりに活かすことが出来る貴重な機会を貰えたこと。それらは特別な経験だと思っています。
サロンワークから独立し、サンフランシスコ市内で小さなスペースを借り、自宅の1室でもアロマテラピーサロンを始めました。ソロでのビジネススタートです。ずっと温めていたアイデアを開花させるべく、トリートメントの仕事と並行して、ビジネスについてのワークショップ やセミナーにも通いました。セラピストとしての経験はありましたが、ビジネスについて学ばなけばならないことが多くありました。
施術の対象は高齢者、妊産婦、プロのセラピスト、子供、いろいろな方々に施術をさせて頂きます。その経験と学びが、また次のクライアントへ還元していく毎日。そして、気づけばこのお仕事も20年以上が経ちました。
アロマセラピーがご家庭でも安全に使える自然療法であることをトリートメントだけではなく、経験、体験してもらえる場を作りたいと思い、いろういろな活動も始めました。そして自分が実際に使い良質な精油や天然素材の取り扱い、アロマセラピーのプロダクト作り、アロマセラピーのクラス。コロナ中にはオンラインを使ってのアロマセラピークラスも開講しました。
私のお仕事のメインとなるサロンワークのアロマセラピーとマッサージですが、
ボディマッサージ、フェイシャルにクリニカルアロマセラピーを組み合わせています。
人の温かい手で行われるタッチング、マッサージは硬くなった体を緩め、疲れをほぐしてくれます。皮膚への優しいタッチ、マッサージは、皮膚体温を上げ、体を温めます。
体を温めると、心も温まるのは、双方に関与する脳の同じ場所が興奮するからです。生まれたばかりの子犬、動物たちが寄り添って肌を触れ合うのは生命維持の体温を保つためですが、皮膚の体温を良い状態に保つことは、生きるために大切だということです。
人の手で肌に触れること、体に触れられることは人の皮膚感覚を呼び覚まし、今の自分の存在を確認出来ます。背中をさすられることで気持ちが落ち着いたり、痛みが消えていくような感覚を体験されたことはありませんか?それが特に安心出来る人、親しい人からだと、効果が大きくなることが研究で分かっています。肌の触れ合いは、お互いに良い相乗効果をもたらすこと。触れること、触れられることで、言葉ではないコミュニケーションが生まれます。そして面白い研究結果もあるのですが、オキシトシンの分泌の多い人に触れられると、触れられる側のオキシシンの分泌も多く促すことも。
このことからも施術する側の私たちセラピストのメンタル、コンディション、ケアも大切だと改めて思います。
アロマセラピーとは植物の香り(精油)を使用し心身の不調を癒し、健康維持に役立てる療法です。実際のアロマセラピー は植物から抽出した芳香物質である精油をキャリアオイルで希釈したもので行うマッサージや、精油の香りの拡散、吸入などの方法があり、心身共にバランスを整えます。
アロマセラピーの作用
①心への働き:精油を嗅ぐとエンドルフィン、セラトニン、アドレナリンなどが分泌されると言われています。香りによって刺激される大脳辺縁系、視床下部、下垂体などは自律神経なや内分泌系などの働きをコントロールしています。
②体に対する働き:精油成分は体の各器官を刺激し、それらの働きを向上させる効果が知られています。
③皮膚に対する働き:精油の持つ肌への美容効果が期待できます。
精油の体内へのルート
①呼吸:血液へと取り込まれる
②嗅覚:を介して脳へと電気信号で送られる
③皮膚:粘膜:浸透し血液へと取り込まれ全身を巡る
精油成分は分子量が小さいので皮膚の内部に浸透します。精油は体内を巡り、腎臓、肝臓に運ばれて解毒。代謝され、最終は尿や便、汗などから体外に排出されます。
精油の香りからだけではなく、私達の生活の中で香りによって心身に影響を受けています。
例えば、熟したフルーツ、コーヒーの香り、焼き立てパン、食事の香りで唾液が分泌されたり、食欲が増進する、イライラが消える、昔の記憶が蘇るなど。
逆に心身に不快な気分や身の危険を感じることもあります。薬品、消毒液の匂い、タイヤの焼けた匂いなど。
人は、香水、石鹸、シャンプーを選ぶ際には香りを嗅いで選びますよね。好きな香りは自分にとって大事なものだからです。
アロマセラピーマッサージを受けた方々から感想の中には、肉体的な疲労、精神的な気分の落ち込み、ストレス、不眠、痛みの緩和。精油の香りから懐かしい思い出が蘇り嬉幸せな気持ちになった、過食が抑えられた、勉強に集中出来た、パニックが改善した、など。
日本でのアスリート達を対象にグレープフルーツの精油を嗅がせた後のある実験では、グレープフルーツの精油を嗅がなかった時よりも、精油を嗅いだ時の方がパフォーマンスが上がったという結果が出ました。過度の緊張が緩和され、リラックスしてパフォーマンスを行えたということです。
香りを嗅ぐ嗅覚の働きですが、動物が生きている上でとても大切な感覚です。
アロマセラピーとマッサージの組み合わせは、植物の香りのもつ効能や作用と、人の温かい手で、緊張した体を緩め、心身の疲れを癒し、バランスを整えていく。これが私の目指すアロマセラピーマッサージです。
そして、このお仕事を長く続けてこれたことは、アロマセラピーのトリートメントを行う度に、私自身もタッチングと香りの恩恵を受けているからだと思っています。
2020年、世界中を震わせたコロナ禍。今までの生活が出来なくなりました。人感染への不安や恐怖の中、大切な人、家族、外部との接触も絶たれました。特に人との接触が困難となった高齢者、疾患を持つ人たち。私の日本にいる祖母や家族に会いにいくことが出来なくなりました。祖母が私のハンドマッサージが好きだったことから、高齢者施設での訪問ハンドマッサージを始めました。週一訪問の度にコロナテストを受けてからの施術。施設内でロックダウンの度に中断しながらも、施設のスタッフの協力と、ハンドマッサージを毎週楽しみにし、施術を喜んでくださる人々のお陰で出来ました。人は人によって、お互いに癒されるのだと教えられました。
高齢者の方々だけでなく、このコロナ禍で変化した生活から、今でも多くの人々は心身にストレスを受けています。大切な人、家族、友人、人とのコミュニケーションを絶たれることは人にとって大きなストレスになること。
触れるということで、人を大切にする思い、思いやりが生まれ、触れられることで、人から大切に扱われているという安堵感が生まれます。それは決して生まれたばかりの赤ちゃんが、お母さん肌の温もりが成長に必要なだけではなく、誰しもが人との触れ合いが大切なことなのです。私達は肌を境に自分と外の世界、他者との境界線を感じ取っています。その皮膚感覚は脳へつながり、ホルモン分泌を促し心身に働きかけます。マッサージとは人間の一番大きな臓器の皮膚を通して、言葉でない感覚によって、手で癒すことの出来る、とても原始的な療法なのです。なんて魅力的な療法なのでしょう!私はこの仕事に魅了され続けているのです。
手作り石鹸 ”Love Bar ”の誕生について
石鹸を作り始めて約20年ほどになります。
当時、原因不明の皮膚炎に苦しんでいた母に何か良いものはないかと、名医と言われる皮膚科の先生を訪ね、皮膚に良いと言われるものは試しました。いろいろな自然療法を試した中で、辿りついたのが手作り石鹸でした。
私の作った石鹸を使い始めてから、母の肌の状態も良くなり、それが嬉しくて石鹸作りに夢中になりました。溶けにくい、キメの細かい、泡立ちの良い、そして保湿力のある、肌に優しい石鹸を目指し、何度も何度も試行錯誤して、今のLove Bar石鹸が出来ました。
当時家にいたラブラドールがこの石鹸をペロペロと食べたこと。市販の犬用シャンプーではなかったことなのですが。それから益々石鹸作りが好きになりました。
母の肌の状態が良くなると、肌のトラブルに苦しんでいる周りの方々から、この石鹸を使いたいと言われるようになりました。この石鹸を使用してから、肌の乾燥やトラブルが改善されたと嬉しい報告ともに、人から人へと石鹸が伝わっていきました。
石鹸を作る前の私も同じでしたが、石鹸を使うと肌がつっぱる、乾燥するというイメージを多くの人は持っています。
love barの洗い後は、肌はしっとりとし、肌が突っ張らないので、この石鹸を使った人は大変驚きます。
石鹸には、全てオーガニック、天然素材。植物オイルに、日本古来から美容のために使われてきた、米糠、小豆、炭、よもぎなどを使用しています。
日本の我が家の生活の中には、祖母や母から続く昔からの自然の知恵がありました。それらは人に自然に優しく環境にも繋がります。
この石鹸が使われた後、水と共に海へ流れていくこと、パッケージの材料も出来る限りゴミになるときのことも考えました。私はアロマセラピストで精油を使いますが、貴重な精油は大切に使用したく、石鹸の香料のための大量使用はしたくはありません。この石鹸に香りを使わないのは、使用している材料の植物、天然素材そのものを感じて欲しいこと。そして香料に敏感な人にも使って頂きたいとの思いです。
1つ1つの工程は全て手作業。まず材料を測り、それらを時間をかけて拡散し、型に流し込み、24時間寝かします。大きさをカットしてから、1ヶ月半から2ヶ月以上ゆっくりと乾燥させます。
石鹸作りは集中出来る、静かな早朝に行うようにしています。この石鹸が使用出来るまで時間はかかりますが、全てのプロセスが好きですし、この石鹸を使う人が、肌だけではなく、心にも気持ちが良い体験をしてもらえることを願い、1つ1つ丁寧に作ることを今も変わらず続けています。
優しく、丁寧に、愛を込めて作ること。祖母や母に言われたことを心がけています。
今までの経験から思うことは、肌に良いものは大変にシンプルだということ。
私たちの体、肌の構造、働きを知るとそこがよく理解出来ます。
そしてセラピストとして忘れたくないことが ホリスティック。
”肌の状態を健やかに保つには、内側から90%、外側lから10%” 内側から、一番外側の皮膚に影響するということ。私達セラピストがその10%のうち何をお手伝い出来るか。
日本の美容学校で学んだことです。
私が行うフェイシャルのトリートメントは全てオールハンドの手技で、アロマセラピー、良質の植物の基材、天然のクレイなどを使用します。それらはシンプルでとてもパワフル。
ボディマッサージ、アロマセラピー大切にしたいと思うのはホリスティック。
見た目の美しさだけでなく、全体的な健やかさ。
自分の興味のあること、好きなこと、したいことを続けてきた結果、色々なお仕事に恵まれ、繋がり、こうして現在もお仕事をさせて頂いています。これまで沢山の方々との出逢い、多くのサポートを頂き、今も尚、多くの方々に助けられての自分があります。日々、感謝の気持ちです。ありがとうございます。
それぞれの場所、現場でストレスケアの専門家として活動している、多くのセラピスト達。私も一人のセラピストとして、これからも学びと歩みを止めず進んで、いくつになっても現役で活躍していたいと願っています。